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物語

 奈良県東部の山間地。自然豊かなこの里に、旧家を改装したグループホームがある。ここでは軽度の認知症を患った人たちが、介護スタッフとともに共同生活をしている。その中の一人、しげき(うだしげき)は、33年前に妻・真子(ますだかなこ)が亡くなってからずっと、彼女との日々を心の奥にしまい込み、仕事に人生を捧げ生きていた。

 そして今、しげきは亡き妻の想い出と共に静かな日々を過ごしていた。誰も立ち入ることの出来ない、しげきと妻だけの世界。そのグループホームへ新しく介護福祉士としてやってきた真千子(尾野真千子)もまた心を閉ざして生きていた。子どもを亡くしたことがきっかけで夫(斉藤陽一郎)との別れを余儀なくされたのだ。つらい思いを抱えながらも、真千子は毎日を懸命に生きようとしていた。

 ある日、亡き妻の思い出の詰まったリュックサックを、そうとはしらず何気なく手にとった真千子を、しげきは突き飛ばしてしまう。自信を失う真千子を、主任の和歌子(渡辺真起子)は静かに見守り、「こうしゃんなあかんってこと、ないから」とそっと励ます。次第に、真千子は自分の生き方を取り戻し始める。そして毎日の生活の中で、やがて心打ち解けあっていく、しげきと真千子。

 真千子は、しげきと一緒に妻の墓参りに行くことになるが、途中で真千子が運転する車が脱輪してしまう。助けを呼びに行く真千子。しかし、事態は思っても見ない展開になるのだった・・。